LA GAZZA LADRA
《どろぼうかささぎ》2幕のメロドランマ LA GAZZA LADRA
- 台本:ジョヴァンニ・ゲラルディーニ
Melodramma in due atti di Giovanni Gherardini- 作曲:ジョアキーノ・ロッシーニ
Musica di Gioachino Rossini- 校訂:アルベルト・ゼッダ (クリティカル・エディション、リコルディ版)
Edizione critica della Fondazione Rossini, in collaborazione con Casa Ricordi, a cura di Alberto Zedda- 新演出 (日本初演) Nuova produzione
- 初演:1817年5月31日、ミラノ・スカラ座
- 指揮………………アルベルト・ゼッダ Direttore ALBERTO ZEDDA
- 演出…………ダヴィデ・リヴァーモア Regia DAVIDE LIVERMORE
- 美術………サンティ・チェンティネオ Scene SANTI CENTINEO
- 衣装………サンティ・チェンティネオ Costumi SANTI CENTINEO
- 照明…………………………石川 紀子 Progetto luci NORIKO ISHIKAWA
- 特殊操作……ディミートゥリ・ロッシ Effetto speciale DIMITRI ROSSI (FLY NOW)
- 合唱…………………藤原歌劇団合唱団 Coro FUJIWARA OPERA CHORUS GROUP
- 演奏…東京フィルハーモニー管弦楽団 Orchestra TOKYO PHILHARMONIC ORCHESTRA
- チェンバロ…………………小谷 彩子 Cembalo AYAKO KOTANI
- ニネッタ……………チンツィア・フォルテ
Ninetta ... Cinzia Forte- ジャンネット…アントニーノ・シラグーザ
Giannetto ... Antonino Siragusa- 代官ゴッタルド…………………妻屋 秀和
- フェルナンド……………………三浦 克次
- ルチーア…………………………森山 京子
- ファブリーツィオ…………………若山 勉
- ピッポ………………………………松浦 麗
- イザッコ………………………小山 陽二郎
- アントーニオ………………………青柳 明
- ジョルジョ………………………坂本 伸司
- エルネスト……………………小田桐 貴樹
- 裁判官……………………………安東 玄人
LA GAZZA LADRA
89年ペーザロ・ライヴ ケルン歌劇場 DVD フォルテ出演 ゼッダ指揮 廃盤 CINZIA FORTE
ANTONINO SIRAGUSA's Rossini CD (selection)
ALBERTO ZEDDA's Rossini Series on Naxos
このオペラを初めて聴いたのは、89年ペーザロのロッシーニ・オペラ・フェスティヴァルで上演された際のライヴCD(90年)と、ごく普通の頃あいでそんなに年季が入っていないですが、これをゲットした時はかなり聴き込んだのですが、その後に生に接する機会はなかったので、とりあえず行く事にしました。作品は当然日本では馴染み薄いですが、序曲は『時計じかけのオレンジ』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』といった映画でも印象的に使ってましたし、CFでもちょくちょく使っていて、そこだけはお馴染みなんですが、それだけの理由で来る人はいる訳もなく (で、入りも....)。こうやって通して見ると、かなりクドくご都合主義な内容で、全く水戸黄門と同じで笑える。うっかり八兵みたいな小姓ピッポがうっかりな発言で投獄された町の有志の許嫁が、悪徳お代官様が手込めにしようと軟禁して陵辱。しかし、ピッポが無実である証拠を見つけて....。書くにはまどろっこしい内容。
昨年ペーザロで上演したので、その公演が来るのかと思ったら、日本独自の新演出ということで、ペーザロのが駄目な演出のか? ペーザロのロッシーニ・オペラ・フェスティヴァルは昔行ったっきりで、もう行きたい感じじゃないのでどうでもいいんですが。バルセロナとかで同音楽祭の演目だった《セミラーミデ》とか見たら最悪な演出だったりして、やっぱりここのセンスは合わんということに (アルサーチェのエヴァ・ポドレシのみ最高であとは、どっちらけ)。ロッシーニで満足させてくれる歌手が90年代中盤に一気にいなくなり、世代交代しましたが、それ以後は妥協してして音を楽しむ程度という寂しい状況。とは言っても、たまにはミラクルもあるので、無視する訳にはいけない。ゼッダ大先生も80歳ですが健在だし。どちらかというと、ゼッダ氏がオペラ公演を指揮するもう一つのロッシーニ祭であるロッシーニ・イン・ヴィルトバートの方が今なら興味深いし、変わった演目とかもやっていて10数年前から行きたいと思いつつ夏のハイシーズンはきつくて行けず....。ペーザロでジャンネットを歌ったウィリアム・マッテッウッツィが10年位前までマスタークラスとかしていたし、演奏会とかもやっていたんですが、もう歌わなくなったと頃にラウル・ヒメネスに交代してしまいました。ジャンネットの超高音を歌える歌手が今はいないので(そのうちフロレスとかがやるればいいんでしょうが...)、これは上演しずらい演目ですが、今回のシラグーザはほどほどで、それほどアクロバティックな芸当は披露しませんでした。作品が作品なんで、ソプラノはリリコ・レッジェーロよりはドラマティコなので、曲芸を披露する感じじゃないですが、そういう役をやるとなると演技力がある人じゃないとぐっとこない。それにこの役はロッシーニ歌いとかがやる役ではないので、同じペーザロの演目をケルンで収録した公演もイレアナ・コトルバスだった。その点でチンツィア・フォルテが腕をつかまれて振り回されたり飛ばされたししてまでやるべきだったかは?? (以前やってるけど、聴いてない)。
今回、素晴らしいのは前回同様にアルベルト・ゼッダ氏の指揮。そして縦横無尽に飛ぶかささぎを操作したリモコン操作の達人ディミートゥリ・ロッシの驚愕のテクニック。それだけで良しとします。なお、元テノール歌手のダヴィデ・リヴァーモアの演出はオーソドックスな感じで余計なことはそんなにしてないし、最近のトラッシーな演出ではないので悪くない。装置はシンプルだけど考えられたつくりでこれまた悪くない。イタリアやドイツでやる分には問題ない感じ (フランスだったら地方公演ならいいかも...でもパリ向きではない)。
なお、昨年録音した《湖上の美人》が1月末に出ましたが、それをゲットしたばかりで、まだゆっくり聴く余裕がない中で、ゼッダ氏にサインをおねだりしましたが、本人にはまだ手渡っていないのか、なんだかもう出たのかみたいな感じでした。次回は7月にヴィルトバードで指揮する《アルジェのイタリア女》(マリアンナ・ピッツォラート、ローレンス・ブラウンリー、ロレンツォ・レガッツォ)の演奏会がCD化とのことですので、ピッツォラートがペーザロに続いて2度目のイザベッラということで、その向上ぶりが気になります。ブラウンリーは大丈夫か?と思わなくもないけど、ヤーコプスとの《タンクレーディ》は思いの他良かったのでうまくいくことを願うばかり。
その前にゼッダ氏はペーザロの日本公演で《オテッロ》を指揮するためまた来日するので、演出が辛そうで、歌手も揃うのか心配ですが、彼の指揮ぶりを聴くためには聴くしかないです(問題は値段)。もう一つの《マホメット2世》は大好きな作品ですが、これこそ歌える人がいない作品になってしまったオペラですが、ヒロインのマリーナ・レベカという歌手はヘンデルとか今歌っているようなので、大丈夫であってほしいけど...。