VATEL

『宮廷料理人ヴァテール』 Vatel

宮廷料理人ヴァテール [DVD]

宮廷料理人ヴァテール [DVD]

宮廷料理人ヴァテール オリジナル・サウンドトラック

宮廷料理人ヴァテール オリジナル・サウンドトラック

Rameau: Les fetes d'Hebe

Rameau: Les fetes d'Hebe

Rameau : Hippolyte et Aricie / Minkowski, Les Musiciens du Louvre

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Rameau: Les Indes Galantes

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  • ジョージ・フリードリック・ハンデル:《王宮の花火》

Water & Fireworks Music

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これはフランソワ・ヴァテール(一心'不乱'に任務を遂行し、疲れ果てて'バテ'て自害するという内容にふさわしい名前!?)の逸話をかなりファンタジーにしてしまった作品。宮廷料理人ではないし、英語発音でヴァテールって言っていてもフランス発音はヴァテルという、今年を漢字一字で表した「偽」というのがいろいろとあてはまる残念な作品。1671年の話なのに、フランスでラモーやヘンデルのオペラ界でもてはやされているからといって、ヴァテルが死んで何十年も後に作られたオペラやら音楽をまぶしているし、コルセットで縛り付けた服を着ている時代なのにいつでも脱げそうなさらさらなドレスを雰囲気でデザインし、ヘアスタイルもまったく論外。という話だけ借りた時代考証無視のとんでも映画。ドラマとしては現代人のがんばって当たり前、でも報われないという現状を描き、どうだ今と同じだろう?って言いたい感じ。トム・ストッパードが脚本に絡むから、出てねって、スターを無理矢理参加させた真摯な姿勢の感じられない作品。この映画のおかげで、日本のTVで料理を紹介するときには大概このサントラを流すというのが今でも続いているけど、選曲担当者はラモーとかをイタリアの高級料理の紹介の時とかに勘違いして流していたりするのが痛い。
ところで、今回の放映素材は日本に来たフィルムを簡易テレシネした素材をただ使っただけみたいで、映像の抜けが全くなく、暗いシーンとかが潰れているし、濁っている。フランスで出ているDVDはPALスピードアップだろうけど、フランス語吹替え版(英語で見るのが不自然だし、フランス公開はそちらでも公開している)がついているし、映像は格段にいいだろうから、それで見ると全然違うだろうし...。この映画の収穫は、厄介な弟君を演じたチャップリンの孫ジェイムズ・ティエレだけど、当時彼がチャップリンの孫だとか公表していなかったので、紹介されずに終わった。オクラ映画「バイ・バイ・ブラックバード」の主演で実際サーカスの曲芸みたいな舞台ばかりやっていてモリエール賞とかも貰っている。チャップリンだから「サーカス」に行くのが当たり前?? で、アニー・フラテッリーニ・サーカス学校の先輩コリーヌ・セローともコラボとかしていました。
音楽の選曲は問題ありありだけど、ラモーの《イポリットとアリシー》のアリアとかモリコーネ書き下ろしの歌でアリエル・ドンバールが例の如く歌声を披露しているのはご愛嬌として、饗宴の開始とともにヘンデルの《王宮の花火》に合わせてカストラート風な声でいた歌っていたのが、今年夏に来日した"バリトン"ケヴィン・グリーンロウ(罰ゲームとしか思えないけど、歌も出演も)だったり、余興のオペラがこれにジャン=クリストフ・フリシュが先立ってたまたま蘇演したのをあまり考えなしにそのまま借りてやったコロンナ(フィルムは誤植)のオペラ《アブサロム》で、その時にも歌ったメッゾのジェンマ・コラ・アラベールが歌ったりしていいてこれが初録音となったり、ラモーの「コントルダンス」とかの演奏がジェラール・レーヌとも来日したパトリック・ビズミュート (来日時にCD持ってないっていうから日本盤あげでしまった!!)がリーダーをつとめるラ・テンペスタが演奏していたりと、無視しがたいものがあるので、サントラはゲットしてみてください (輸入盤は曲の原典とかが不明だったりしますが、日本盤はフォローしてます)。ちなみこれは日曜日の『マリー・アントワネット』にちなんだ特集「華麗なるフランス宮廷」の一本としての放映ですが、困ったことに『マリー・アントワネット』でもこの映画と同じラモーのオペラを選んでます (使用音源は上にリンク)。