STAGE TO SCREEN
- 新文芸坐|映画の日|1000円|『ダウト〜あるカトリック学校で〜』&『フロスト×ニクソン』
映画の日で1000円なので、久しぶりに新文芸坐で二本立てを見ることに。上手い組み合わせで、二本とも2008年の賞レースで話題となった戯曲の映画化なので好都合。それにしても、両方とうも邦題表記に余計なことされて面倒。
『ダウト』の舞台はロマン・ポランスキー演出によるパリ初演で2006年に見ることができたけど、《フロスト/ニクソン》は海外の知り合いがブロードウェイで見た後に楽屋口でマイケル・シーンのサインを貰って写真を撮ったというので、添付してもらいましたが、結局自分は上演中に前大統領在任中は当地に足を踏み入れたくなかったから、行ける訳もなく、結局見られず仕舞い。ロンドンでやっていた頃は完売だったから当日リターンをがんばらなかったのが悔やまれる。なお、日本でもこれから翻訳上演されるようですが、どうなんでしょう。日本語で巻くしたれられても大変そうな舞台で、日常会話じゃない部分は難しい言葉が多いので、原語で素で聞き取り理解できる自信はまったくない。
『ダウト』はフランス語に訳されてた版だったけと、余りに見事な演出と演技、そして信じられない早さの場面転換で圧倒的だったので、この作者本人による映画化はあの時のインパクトはこの演出ではそれほど得られなかった....。舞台では制約のなかで作っていた空間を現実に移し替え、映画ならではの作りにするのは当然やるべきことだとは思うけど、舞台は4人しか出ないシンプルな作品なので、いろいろ余計なことやりすぎて、演技に集中させてくれなかった嫌いがある。こういうのは、映画にするより単にTV収録したのを放映かDVD売りでもして貰う方が、ありがたいし、戯曲の原型が崩れるので、困ります。メリル・ストリープも「自分がやるより、チェリー・ジョーンズがやればいいのに」と、最初断ったと言っていたけど、彼女じゃこれだけ話題にさせることが出来なかったからとの制作サイドの舞台を映画化する際のいつもの理由。この手の話は『マイ・フェア・レディ』をオードリー・ヘプバーンが初演のジュリー・アンドリュースに「本当はあなたがやるべきだった」と後で言ったそうだけど、理由はこの場合と同じ。むっちりしているからこの手の役はお手の物のフィリップ・シーモア・ホフマンも愛妻家ぶりをアピールして本当はそっちじゃないことを見せすぎてなんとももうすんなり見れない。その点、初演のブリアン・F.オバーンは『OZ』でもそうだったけど危うい感じがありありで、本当に役に合いそう。パリでやったティエリー・フレモンもその点では悪くないけど。ヴァイオラ・デイヴィスはいいんだけど、パリでやったフェリシテ・ウアシの方がもっとすごかった。エイミー・アダムスはどんどん良くなっておりますが、彼女がブレークするきっかけとなった「Junebug」が映画鎖国日本では公開されず仕舞で情けない限り。なぜか本国じゃなく英国でBlu-rayになるので、それでまた見たいもんです... (でも機械がない!)。
「ダウト〜あるカトリック学校で〜」DOUBT, A Parable
Character | NY 2005-6 | Film | Paris | |
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Director | Doug Hughes | John Patrick Shanley | Roman Polanski | |
Sister Aloysius | Cherry Jones | Meryl Streep | Dominique Labourier | |
Father Flynn | Brían F. O'Byrne | Philip Seymour Hoffman | Thierry Frémont | |
Sister James | Heather Goldenhersh | Amy Adams | Noémie Dujardin | |
Mrs. Muller | Adriane Lenox | Viola Davis | Félicité Wouassi | |
Polanski |
逆に『フロスト×ニクソン』は、2006年ドンマー・ウェアハウスと2007年ブロードウェイでの主演二人はそのままだったので、どんなもんかと思ったら、これまた舞台で無理だったことを映画では全部再現するということに重点を置いていたような感じに見えた。マイケル・グランデイジの演出の方が絶対よかったと思うけど、ロン・ハワードがやるからアメリカでも大々的に公開されることになったので、作品を世界に知らしめるにはこれまた仕方ないようで....。それより、元のインタビュー自体を見ていないのでどれだけ再現しているのかも解らず。技術が発達しているので、少しは本人に似せるメークとかを施してもいいような気がしないでもなかったのも...。ニコールでさえヴァージニア・ウルフを演じるのに顔を変えたんだから、少しは工夫して似せる努力もして欲しかった。最後の方でドナ・サマーの「I Feel Love」がピコピコと流れだし、時代が「Studio 54」の狂乱の方向に向かっていくのを暗示していたのは皮肉。なお、この映画で偉いのは、舞台の主演二人でなきゃやらないという決定事項。前者とは姿勢が違う。これは『プロデューサーズ』と同様で、今やあの伝説の舞台が上演されていないことを考えると満足のいく映像化であったし... (映画じゃないと呼ばれようが、あの舞台でやっていたことが、そのまま残ることが重要....)。
実際のTV番組 | 戯曲 | サントラ | DVD | Donna Summer "I Feel Love" |
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この手の実話を元にした舞台が多いですが、今一番気になるのが、9月17日からロンドンのロイヤル・コート劇場で上演される《ENRON》。あのジェフリー・スキリングをサミュエル・ウェストが演じるので11月7日まで上演されるので、なんとかして見たかったけど、チチェスター演劇祭で評判となって話題沸騰のため、上演前なのに完売ということなので、ウェスト・エンドに移行して上演してもらうことを祈るのみ。その内、これまた映画化にでもなるんでしょうか...。サミュエル・ウェストと言えば『ハワーズ・エンド』ですが、10月にアメリカでBlu-rayが出ることと、映画でサミュエル君が本棚が倒れて亡くなる場面で使われた本棚なども含むマーチャント・アイヴォリーの所蔵品をクリスティーズでオークションに出すというので、どれだけのものになるのかがちょいと気になるところ...。